2020.03.13 「今月のBEST OF THE BEST」~普段の掃除が一番大事
こういったお掃除指南を片手に目の前の汚れと対峙するとき。そこに書いてあるような汚れではないものがこびりついていたり、はたまた汚れの原因といわれるものが見当たらないことって、案外、しばしば、生じます。
私が、大掃除の手順のレクチャー記事で汚れのビフォー・アフターを撮影するために伺った、とあるお宅でのこと。
換気扇フィルターの撮影をしようとして、そこに「タバコのヤニ」しか付いていないことに気づきました。なんと調理中によく出るはずの「油煙」由来の汚れが、まるでない。
聞けば、住まい手の方は、お湯さえ沸かさない外食ライフスタイル! さもありなん、と納得しましたが、掃除法として通常の換気扇掃除の手順が応用できず、いささか困りました。
加えて、こと住まいの汚れに関して言えば、そこで生活している人が元気であればあるほど汚れ方は激しいものになります。家の内外の出入り頻度が頻繁であればあるほど、泥砂の搬入は増え、花粉や煤煙(ばいえん)の衣類への付着と持ち込みも増え、屋内での動きが多ければ多いほど皮膚のかけら(フケやアカなど)や衣類クズ(繊維ごみ)の発生が増えます。わかりやすいところでは、みるみる床が汚くなります。
そこを動き回る人が多いほど、床に溜まったホコリの舞い上がりも増えますので、天井近くの照明、カーテン、壁が汚れたりします。そこで呼吸する人など生き物が多いほど水蒸気が増え、結露も促されるので、カビの発生リスクが高まります。そうなるとダニの発生も懸念されます。
浴室もトイレも洗面所も、汚れの度合いは使用頻度に比例します。つまり生きることは汚すこと、と言って過言ではないでしょう。そこで生活している人が元気であればあるほど、掃除も頻繁かつ深めに行っていかないと大変な状態に「すぐ」なってしまうということです。
かように住まいの元々の環境や条件と、住まい手の人数や個性が掛け合わされて、レアなオリジナルブレンド「汚れ」が養い育てられていきます。ですから、本当のところ正しく合理的な掃除方法というのは、その家を見てみないとわかりません。お隣の家のベストなやり方が我が家でもそのまま応用できるわけではないのです。
私たちの身体は、全て食べたもので出来上がっています。それはたまに食べるものやご馳走のようなものではなく、普段から食べているもの。当たり前に口にしているもの、そういったものです。
掃除も同じで、私たちの衛生的で快適な暮らしを成り立たせているのは、普段の掃除、「我が家にとって」当たり前の掃除の内容です。それは年に一度の大掃除だけでは整えきれません。また全てを外注で済ますというのも現実的な話ではありません。
もちろんイレギュラーな物事は折々あります。多人数が家にやってきたとき(ホームパーティーなど)や、子どもが生まれたり、ペットを迎えたりするなど家族数に変動が生じた場合。また感染症などによる粗相でにわかに汚れが重篤になることもあります。花粉やPM2.5などの影響で換気ひとつが滞っても、住まいの汚れ方は変化します(カビが増えるなど)。台風等の自然災害があってはその比ではないことも。
そういった状況から、なるべく早く生活を立て直すにも、なにより普段の当たり前の掃除をおろそかにせず、淡々と少しずつ行うことが大切なのだろうと思います。
いつもの道具で、ときに新しい洗剤なども試しつつ、暮らしを整えていきましょう。生きていく限り、それは続きますので。