2018.09.12 敬老の日には簡単にできるプチバリアフリーを!

内閣府の「平成29年版高齢社会白書」をあたると、65歳以上の高齢者は65歳未満の人よりも住宅内での事故発生割合が高いということがわかります。たとえば「一般道路」での事故発生割合が6.9%であるのに比べると「住宅」は77.1%と、なんと10倍以上の値なのです。
その他「民間施設」での事故が8.2%、「公共施設」が1.5%、などと比べてみても、いかに「住宅」内での事故が多いかということなのです。さらに事故発生場所として最も多いのが「居室」で、45.0%。次点が「階段」で18.7%、「台所・食堂」17.0%、の順になっている点にも注目しなければなりません。
いわゆる「居室」という部屋には、居間(リビング)などのほか寝室なども含まれます。つまるところ高齢者は「日常的に、長時間過ごす部屋」で事故を起こしているのです。
意外なのですが、いかにも危険そうな「風呂場」ではたったの2.5%、「トイレ」でも1.5%程度と、「居室」の数字に比べてしまえば、その頻度は20分の1ほどしかありません。ただし「玄関」では5.2%ありますから、いささか気をつけないといけない場所だといえるでしょう。
高齢者の事故、特に普段からいる「居室」などで起こりやすい「転倒」は、もっとも危ぶまねばなりません。その最大の理由は、若年層にとってはちょっとした打ち身や捻挫であってすら、高齢者ではそれを皮切りに「寝たきり」になってしまうなど、重篤な状況に容易につながりかねないためです。
軽症かと思いきや骨折していたり、動けないのがたとえ短期間でも認知症に至ってしまうこともあります。独居の場合などは身動きができないまま飲み食いもできずに脱水症になってしまうケースも考えられます。転倒イコール「命に関わること」といっても決して大げさではないのです。
とりわけ秋から冬にかけて、気温が下がってくるのに比例して高齢者の日常生活の「動き」そのものが少なく、緩慢になる傾向があり、それが不意の転倒を引き起こしてしまうことが考えられます(廃用性症候群)。では、どうしたらこの身近な場所で起こる「転倒」の予防策を講じれば良いのでしょう。
一つは、本人の運動機能をなるべく維持するということです。言うほどそれは簡単なことではありませんが、支えのある場所での「片足立ち」などは骨密度を高め、下半身の筋力を維持することに効果の見込める、比較的手軽な運動方法といえるでしょう(※1)(※2)。
目を開けた状態で「片足」で立つこと(開眼片足立ち)を左右の足で1分間ずつ、1日3回行うことによる運動負荷は、なんと「53分間」歩くことにも匹敵するというデータがあるくらいですから、軽視できませんね。
また、自分の行動範囲内に「手すり」を多く設置するのも転倒防止に大きく役立ちます。すでに「ヒヤリ」としたことのあるポイントを逃さずにおくことが大切です。
介護保険の保険者で、かつ介護認定を受けている方で条件を満たしている場合には、自己負担1割の額で介護リフォームの改修工事を行うことができます。支出に上限はありますが、当座必要な内容はケアマネージャーに相談することで適切に選ぶことができるでしょう。
ただ、まだ介護認定にはいたっていない場合や、不安はあっても軽度な場合など、手軽な方法でバリアフリー化を図り、住まいの安全性を高める方策を採るのも一案でしょう。
手すりのない椅子の隣などに補助手すりを設置する、滑りやすい床部分に滑り止めを施す、目の見えにくい部分に明かりを増やしたり光量を増やすことなども、ちょっとしたことでありながら如実に生活の質を高めます。
本人の不安や不便を少しでも解消できる方向に、なるべく容易な方法から、住まいの「バリア」を減らしていけると良いですね。